老化はエクソソームによって加速する?

日本やアメリカで、エクソソームを使ったアンチエイジング治療が人気を集めていることをご存知でしょうか?

しかし米国食品医薬品局(FDA)は、間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソームを使ったアンチエイジング治療に対して警告を出しました。これは何を意味するのでしょうか?

FDAが懸念しているのは、この治療法の安全性です。エクソソームは理論的には有望ですが、抗老化目的での安全性と有効性がまだ証明されていないのです。

間葉系幹細胞(MSC)は複製能力があり、いろいろな細胞に分化できるので、再生医療に活用できると考えられていました。しかし移植してもあまり定着せず、細胞を含まない上清液を使っても同じような効果があるため、上清液中にあるMSCエクソソームが使われるようになりました。

MSCエクソソームは、傷の治癒や痛みの軽減などに有効であり、心血管疾患や腎臓、肝臓疾患などにも効果があることが示されました。

このようなMSCエクソソームの効果は、炎症を抑制する免疫調整作用によることがわかってきました。特に血液脳関門(BBB)を越えて脳内にも作用することによって、アルツハイマー病などの神経疾患の治療に新たな道が開かれ、大きな期待がかけられています。

しかしながら、体内のエクソソームは炎症や病気の成分を含むものが多く、老化を促進することがあります。特に脂肪細胞では軽度の炎症が起こっており、炎症物質を含む可能性が高いのです。がん細胞はエクソソームを転移の道具として使うことがわかっています。

MSCエクソソームは元の細胞を採取して培養する必要があり、多くは脂肪細胞を利用しています。培養による雑菌混入による事故や、継代数の増加によるがん化のリスクもあります。

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