科学技術が進んだ現代においても、人間の力が及ばない領域がまだたくさんありますね。私たちの研究テーマである認知症と老化もその例です。認知症は認知機能が低下して日常生活に支障をきたすだけでなく、人としての尊厳を傷つけることもあります。
老化は動物ならば避けて通れない自然の現象ですが、人によってその進み方には大きな差があります。若々しく見える人もいれば、驚くほど老けて見える人もいます。この差はどこから生まれるのでしょうか。そして見た目の老化と認知症は関連があるのでしょうか。
寿命は遺伝子で決まっていると思っている人がいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。確かに生まれながらに持っている遺伝子の変異で病気になりやすい体質の方はおられますが、動物の寿命は遺伝子によって機械的に決まっているわけではないのです。
それでは何が老化を支配しているのかというと、それは「炎症」だと考えられています。最近の研究では、炎症、特に慢性炎症が老化と寿命に重要な役割を果たしていることがわかってきました。つまり炎症が老化と寿命を制御すると考えられているのです。
慢性炎症は、認知症に関連しますが、見た目の老化に関係します。私たちが開発した乳酸菌EVはその炎症を抑制することがわかってきました。私たちは乳酸菌EVが認知症や肌の老化を改善することができるかを明らかにするために、臨床試験の計画を立てています。