人と細菌は全く異なる生物なのに、EVという共通のメッセージ物質を出すのでしょうか。
すべての生命は約40億年前に誕生して、互いに影響を与えながらともに進化してきました。細菌とヒトという異なる生物間で共通の仕組みがあるということは、それらの共通の祖先の時代からEVは存在していて、互いに協調と競争の中で生きるスペースを確保してきたと考えられます。
生きるために相手を攻撃したり、他の細胞が進化して獲得したものを拝借して自分のものにすることもあったようです。そのような情報は、EVの中に積まれた荷物でやり取りされたと考えられます。
人のような動物では、EVは老廃物の運び出しに使われる一方で、炎症と免疫の仕組みに進化していったと考えられています。
動物の細胞の中にはミトコンドリアという小器官があります。約20億年前に酸素を利用できなかった私たち真核生物の祖先が、酸素を使ってエネルギー物質をつくることができる好気性細菌を取り込んで進化したのがミトコンドリアと考えられています。
古い地球では酸素は存在せず、酸素をつくる細菌が出現してから地球上に酸素が増えてきました。酸素を利用しない生物にとって酸素は毒であり、私たちの祖先は存亡の危機にあったわけです。
好気性細菌を取り込むという起死回生の策は、その後の真核生物の大繁栄をもたらしました。このような経緯から、ミトコンドリアと細菌は非常によく似ていて、どちらもEVを大量に出します。特に私たちが開発した乳酸菌EVは、動物ではミトコンドリアだけにある膜の成分(カルジオリピン)を豊富に含んでおり、ミトコンドリアに届いてミトコンドリアの量を増やしたり、炎症を抑えることがわかってきました。